アオイの好奇心

筆者(アオイ)の個人的な好奇心に基づいて、自由気ままに綴るブログです。

social theme books 第2回「1984 フクシマに生まれて」

ずっと昔、「social theme books」というシリーズで、一度だけ本を紹介した。

今、再び、広く知ってもらいたい本、心に、本棚に留めておきたい本を紹介したい。

という訳で、「social theme books」第2回をお届けする。

 

「1984 フクシマに生まれて」講談社文庫オリジナル。

大野更紗開沼博

 

 

昨日買って今日読破したが、凄い本だった。

この本は、難病を発症したエッセイがベストセラーになった大野更紗さん(著書に「困ってるひと」「さらさらさん」)

原発フクシマの関係性、中央と地方の関係に切り込んだ「フクシマ論」の著者、開沼博さん。

二人とも、奇しくも1984年、福島生まれ。

注目の若手論客二人の対談を始め、二人が6人の各界の論者たちと語り合う、鼎談集である。

 

で、ここで恥ずかしいことを告白すると、僕自身は「フクシマ論」も「困ってるひと」も、買ってはいるがまだきちんと読破できていない、ダメダメな読者である。
この2冊を飛ばしてこの文庫本を評価したりしていいものか、というためらいは正直あるのだが、それを乗り越えて、恥は承知で紹介したい。

それだけ、この「1984 フクシマに生まれて」は読む価値のある本である。

 

大まかにこの本の内容を紹介するために、帯に記された目次を記しておく。

 

「難病でも生きてていいんだ!」ゲスト 川口有美子

「日本人の一万分の一が立ち上がれば、社会は変えられる」ゲスト 駒崎弘樹

原発にいちばん近い病院に移籍して」ゲスト 小鷹昌明

「この国の人たちは、もっと自分に絶望したほうがいい」ゲスト 森達也

「『システムを変えてから』じゃ、間に合わない」ゲスト 茂木健一郎

筑紫哲也的なるものの行方」ゲスト 金富隆

 

難病。社会改革。医療問題被災者の問題。

オウム、3.11、教育問題、報道、批評の抱える課題。

私達がこの数年で得たもの、失ったもの。

様々なテーマについて語り合うこの本、文庫オリジナルという珍しいパターンだが、

お求めやすい価格(税抜き850円)は破格だと思う。

何故この本の企画が文庫オリジナルになったのか不明だが、

倍の値段くらいの価値は十分にあると感じた。

むろん、金銭的価値だけが本の価値ではないが、この小さな文庫本にはそれだけの価値がある。

 

本にまつわる雑誌「ダ・ヴィンチ」では、毎月「プラチナ本」を選ぶが、

個人的にこの本は「2014年2月刊行のプラチナ本」と認定したい。

と同時に、私アオイの「留めておきたい本」第二号としてここに紹介文を残したい。

 

震災後、「社会の役に立ちたい」と思う人の割合が何割か増えたというニュースを見た。

それに共感する、全ての人に読んで欲しい一冊である。

日本を、社会をあきらめたくない人に、ぜひお勧めしたい。

脱原発」「原発推進」の二元論にうんざりしている人にも効く本である。

小難しい本であることは否定しない。

だが、84年生まれ、現時点でいまだ20代の若手論客がこのレベルの鼎談を行えるということ、それ自体が確かな希望だと思う。

一人でも多くの人に、まだ若手と言えるであろう論客が立派に育っているという希望を知ってもらいたい。

 

「生存視聴率」という言葉が文中で出てくる。

その意味については本を読んで頂きたいのだが、

この小さな文庫本の売上が、大野氏、開沼氏の「生存視聴率」に少しでも貢献できればと思う。

僕がこのブログでお勧めの記事を書いたところで、大した影響力など持たないことはわかっている。

でも、自分には自分に可能な範囲のことをやっておきたい。

そう思って、このエントリーを記した。

 

一人でも多くの人に、この本が読まれますように。

 

それでは、また次の記事でお会いしましょう。

アオイでした。