Social theme books 第6回「データを紡いで社会につなぐ」講談社現代新書
「ビッグデータ」「オープンデータ」「デジタル・アーカイブ」
ニュースやSNSで何となく聞いたことある。意味もなんとなくわかるけど、
結局それって何の役に立つの?
そんな方にぜひ読んでもらいたい一冊がこちら。
「データを紡いで社会につなぐ デジタルアーカイブのつくり方」講談社現代新書。
データを紡いで社会につなぐ デジタルアーカイブのつくり方 (講談社現代新書)
- 作者: 渡邉英徳
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/11/15
- メディア: 新書
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冒頭には「この本は、データと社会の関わりについて知るための入門書です」とある。また、「文系の高校生にも分かるような本をと依頼されました」ともある。
この本は、ビッグデータ、オープンデータ、それらを元にしたデジタルアーカイブの作成に至るまでの、著者の経緯を記した一冊である。
「温暖化で沈む国」として有名なツバルに住む人々の記憶を伝える「アーカイブ」をデジタル技術をもって作ったのを皮切りに、広島、長崎、そして東日本大震災に至るまで、様々なテーマをグーグルアースを基礎とした技術でデジタルアーカイブ化する。
これだけ聞くと何のことだか分からないかもしれないが、
簡単に言うと、ネット上の地球儀であるグーグルアース上に、様々な写真やテキストを貼付けマッピングし、
世界中のどこからでもアクセスできるようにした様々な地域の「アーカイブ」を作る。
例えば、広島に投下された原爆の被爆者の方のインタビューが、グーグルアース上の地図にマッピングされ、クリックするとテキストや音声、動画などで閲覧できる、といった感じである。
この本を読んで一番に感じたのは、「デジタル技術とオンラインと、実際の世界をリンクさせる時代が来たのだなあ」ということだった。
実際の世界と、インターネットの世界は別。なんとなくそんな風に思っている方も多いと思うし、僕もまだそういう印象は強いが、
どう考えてもこの先、二つの世界はどんどん地続きになっていくだろうし、
そのための素晴らしい事例を作った、著者である渡邉英徳さんに敬意を表したい。
「デジタル技術を使って、こんなに役立つ、歴史的にも社会的にも意義がある」プロジェクトは初めてかもしれない。
今更かもしれないが、「始めているひとは、もうとっくに始めている」のだと気づかされた。
デジタル技術の進化に希望を抱く人も否定的な人も、どちらにも希望をもって受け止めてもらえる一冊だと思う。
(もちろん、その技術の利便性と引き換えのリスクについても著者は指摘しておられるが)
デジタルに関わる人、社会的なテーマに関わる人、必読の一冊。
おすすめです。